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入学式
ちょっと忙しくて大変だったので、最近めっきり現れない十円玉です。
暖かくなってきたので、パソコン付近にありが出てきてあばばばば状態の十円玉です。
本日は入学式でした。
そして明日から6時間という忙しい時間割。
新生活って気がめいるんですよね、十円玉は。
続きから小話です
「未来はここにある、ここから始まる」
どうせ全て消えてしまうのなら、カイルのいう未来に賭けてみるのもいい。
歴史の修復作業による歪みの中で、ジューダスはそう思った。
ラグナ遺跡、頂上。
カイルは不可解な状況に出くわしていた。
目の前の何もない空間から、ピンクの服を着た女の子が現れたのだ。
「カイル……」
あろうことかその少女はカイルの名前を知っていたのである。
見知らぬ少女が自らの名前を知っていることにカイルは少なからず驚いた。
「君は……?」
「……覚えていないのね……」
少女は残念そうに呟き、うつむいた。
悲しげにうつむく少女の表情に、カイルはなぜか見覚えがある気がした。
その瞳にはうっすらと涙がたまっていて、胸の奥が痛む。
この少女を泣かせたくないと思った。
それは、この少女がカイルにとって大切な。
「リ……ア、ラ?」
少女が眼を見開く。
その拍子にたまった涙が頬を伝った。
「リアラ……」
カイルの口をついて出てきた名前は、目の前のこの少女のものだ。
出会ったことのない少女の名前を、カイルは知っていた。
「カイル……?」
そう、この世界で、カイルは少女に出会ったことがなかった。
神によって手を加えられていない、この世界では。
「母さん!! エミリオ居る!?」
「僕なら、ここに居る」
故郷に帰って来るなり乱暴にクレスタの孤児院の扉を開け、大声で母を呼ぶ。
ただ、どうやら用事があるのは母のほうではなく、その弟のほうだ。
勢いだけで母を呼んだがすぐ近くに目的の人物が居ると知ってカイルは驚いた。
「カイル、お前は先程旅に出たばかりのはずだが」
声のするほうへと振り返ると、エミリオは椅子に腰掛けて厚みのある本を読んでいた。
「エミリオ……」
「目的は果たしたのだろうな? それとも、早々にクレスタが恋しくなったのか?」
本から眼を離さないまま、エミリオが問う。
そう、カイルは父親と約束をして旅に出たのだ。
それもつい先程。
カイルは気まずげに視線をさまよわせた。
「お前はスタンと約束したはずだ。大切なものを見つけてくると」
見つけたのは大切なものを手にする切欠。
完全に手に入れたわけじゃないから頷くわけにもいかないのだ。
エミリオはもう本を見ておらず、視線はじっとカイルを見ている。
「エミリオ。……俺の大切なものを見つけるためにも、協力して欲しいんだ」
「……何度も言ったが、僕はお前の旅に同行する気はないぞ」
「そうじゃないよ」
確かにカイルは何度も共に旅に出ようと誘っている。
そしてその度に、同じように断られてきた。
「旅に出るの、今はいいんだ。これは、もっと別のことだから」
「…………」
カイルが話を切り出す。
エミリオは黙ったままだった。
「聞いてくれるでしょ?エミリオ……いや、ジューダス」
「…………」
エミリオはカイルのほうを見たまま、何も話さなかった。
また、カイルも何も言わなかった。
ジューダスのことを覚えているかどうか。
カイルの話がどう進むのか。それはエミリオの返答しだいだ。
知らないのなら思い出してもらわなくてはいけない。
それはカイルの大切なものを見つける第一歩だから。
二人の間に奇妙な空気が流れる。
先に動きをみせたのはエミリオだった。
「大切なものは、見つけてきたのか」
それでもエミリオから返ってくるのは同じ問いばかり。
同じことばかりを繰り返すことに、カイルもいい加減うんざりしてきたのだろう。
「ジューダスっ!……いい加減にしないと、俺も怒るよ」
語気を強めたカイルの問い詰めに、諦めたのか呆れたのか、エミリオが軽く溜め息をついた。
「リアラには会えたのか」
「え?」
今度は完全に呆れた様子でエミリオが溜め息をついた。
「リアラに、会えたのかと聞いている」
「え、あ、うん」
唐突に出てきたリアラの名前にカイルは戸惑い、とっさに大きく頷いた。
エミリオはそうか、と相槌を打って最早とっくに開いていただけの本を閉じた。
「それは良かったな。……おかえり」
さらに、普段カイルが見たことのないくらい穏やかにエミリオが微笑んでいたので、カイルは問い詰めていたことを一瞬忘れ、にこやかに返事を返す。
「うん! ただいま」
カイルは満面の笑みで返事を返したが、たった今まで自分が何をしていたかを思い直す。
「ってちがうよ! ジューダス!!」
カイルがエミリオに向かって大声で文句を言う。
エミリオはカイルの文句を溜め息一つで軽く流し、先程まで読んでいた本をもとあった場所へとしまうため、椅子から立ち上がった。
そんなエミリオの傍へとカイルが歩いていく。
「ねぇ、聞いてるの? ジューダス」
エミリオの服をしっかりとつかんで逃げられないようにしながら、カイルは再びエミリオを問いつめる。
「ああ、聞いているさ。リアラには会えたんだろう?良かったじゃないか」
「もうそこじゃないよ! 今俺が言いたいのは何ですぐに教えてくれなかったの、ってこと!!」
つかんだエミリオの服をカイルは引っ張りながら、そんなに背の変わらないエミリオの眼を正面からまっすぐ覗き込む。
カイルは、自分が母に似たエミリオの顔に弱いことを知っている。
同時に、エミリオが父親に似たカイルの顔に弱いことも知っていた。
カイルの思惑に見事引っかかったのか、今までのなかでもっとも深い溜め息をついてエミリオは言った。
「必要なら勝手に思い出す事だ、僕のようにな」
不服そうなカイルにちらりと眼をやってから、エミリオはそれに、と続ける。
「思い出す必要がないからな、そんなこと」
「どうしてさ!」
不満を前面に押し出してカイルが怒鳴る。
煩わしそうに眉をしかめてエミリオが黙って聞け、とカイルの頭を押しのけた。
「この記憶はあるはずのない記憶だということは分かっているな」
「俺達の記憶は正史へと戻ったときに、歴史の修復作業で消えたはずだったんでしょ?」
それはリアラと再開するまで、改変された世界の出来事をまったく思い出さなかったカイルがいい例になる。
カイルは、リアラと出会ったことで旅での出来事を思い出した。
そう考えると、リアラと出会えたのは一種の奇跡のような気がしてくるから不思議だとカイルは思った。
本棚に本を戻してエミリオが続ける。
「理解はしているようだな。……存在しない世界の記憶を持っているなんて、ありえないことだろう」
「そうだけど……!」
エミリオが本の背表紙を指でたどり、中の一冊で手を止めた。
その動きをカイルが眼で追う。
取り出したのは、先程と同じくらいの厚みの本。
きっと自分はその本の半分にも満たないところで寝てしまうだろうな、とカイルは考えた。
カイルにとっての本の厚みとは、枕の高さと同等の意味である。
「わざわざ別世界からの厄介ごとを持ち込む必要はない。覚えていないなら思い出させる必要もない」
カイルの思考を中断させて、さらりと言うエミリオ。
エミリオの発言に対し、やや不満げにカイルが反論する。
「だけどそれは……」
「覚えていないんだ。話したところで分からないだろうと判断した」
「でも……」
「いい加減に納得したらどうだ」
エミリオはカイルが追いかけてくる前に先程の椅子に腰掛ける。
説明の間ですっかり緩んだカイルの束縛からは難なく逃れられた。
この話はここで終わりといわんばかりにエミリオが本を開く。
カイルは納得のいくような、いかないような微妙な表情をしてから孤児院の外へ出た。
多少物分りが良くなったのも、以前の旅で成長したのだろう。
旅をしていたときと違って時間は沢山あるから、リアラとクレスタの街を巡るのだろう。
これから、ゆっくりとリアラとの親睦を深めていくのだろうとエミリオは思った。
カイルに賭けた全ての未来。
カイル達には、正しい歴史の中で出会って欲しい。
スタン達四英雄は誰にも襲撃されることなく平和に過ごして欲しい。
希望はここにある。未来はここから始まる。
自分達は自らの足で歩いて行く。
この世界に神などいらない。
1000年という長いときを経て、神の手を離れこの世界は始まる。
それもまた、一片の運命の物語。
「神=レンズ」かなぁ、なんて^▽^
D2はレンズから一寸離れた時代だと思ってるので。
1000年前から続いたレンズの時代に終わりを告げるのかなぁと。
親離れをする子のキモチ?
神=レンズで、カイルの「神なんていらない!」がこういう意味だったらいいなと思っています。
どうやってオチつけたらいいのかなんかもうよく分からなくなったのでS・ディムロスの名言で^▽^;