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机上の空論
割とオリDの設定に忠実にハロルド=ベルセリオスという人物について考えていたらすっごく楽しかったのでなんか書いてみた
性格とかを考えてた結果は
カーレルと一卵性双生児
マッドサイエンティスト
物凄い猫かぶりで、表面上の付き合いはよくしているがカーレルが嫌い(カーレルとしては双子の弟と思っており、割と好意的)
最近は種の存続と恋愛感情を研究テーマにして、ディムロスとアトワイトの恋愛を(勝手に)研究材料にしている
工兵隊長で中佐(軍人としてというより科学者として上り詰めた地位)
永遠の命を手に入れて世界征服することを狙ってる
なんかこんな感じの人になった
すげえ性格悪いな……
あ、話の中に出てくるハロルドはがっつり猫かぶってます^▽^
名も無き彗星がこの地に墜ちてもう何年過ぎたことだろうか。
あの瞬間、人類の過半数は死に至り、衝撃で舞い上がった粉塵は空を覆いつくした。
太陽の恩恵を受けなくなった地上は極寒の地となり、作物は枯れ、生物は多くの種を失った。
だが人々は希望を捨てなかった。粉塵に遮られ、光を失った地上を捨て、空中都市計画を発案した。
そしてその翌年、その計画は実行に移された。
それから膨大な年月を経て、少ない物資をつぎ込んだ空中都市は完成したのである。
だがそれは新たな絶望への幕開けとなった。
軍法会議。
お偉いさんが集まって一向に先の見えない話し合いをする場。
俺はこの時間が嫌いだった。
「やはりどうしようもないことなのか……」
総司令だの中将だの総帥だの、軍の幹部が勢ぞろい。
さして面白くも無い話し合いには、ほとほと愛想が尽きるというもの。
もうずいぶんと前に衛生兵長さまが淹れてくださった珈琲に口をつける。
少ない物資でやり繰りするためどうしても嗜好品というものは充実されない。
次にいつ補充できるか分からない珈琲は薄くて、お世辞にも美味しいとはいえなかった。
珈琲の入ったマグカップを揺らす。
中に入った液体がゆらゆらと波打った。
物資は尽きかけている。兵ももう、限界に近い。
今この地上は困憊していた。
「中佐、先ほどから黙っているが、何か案は無いのか」
一人の中将が俺を睨み付けるように振り向いた。
だが彼が別に睨んでいる訳ではない事を、俺は知っている。
ただ単に、真面目なのだ。
その性格ゆえ、こういった公式の場では端整な顔立ちが引き締められて、恐ろしいほどに冷たい表情を作るのだ。
ずずっ、と珈琲を口に含む。ぬるい、というか冷たい。
「中佐!」
痺れを切らした中将が机を叩く。
視線の全てが、こちらに集中する。
ちらり、と中将を見返して、つぶやく。
「あるよ」
時間が止まったのではないか、と錯覚するほどの沈黙。
あまりに静まり返ったこの空間に一人ほくそ笑む。
「理論上、この現状を打開することは不可能じゃない」
冷え切った珈琲を一気に飲み干す。
ああ、不味い。苦味だけを取り残したようなこの感じはやはり好きになれない。
「ありえないだろー……」
理論を書類にまとめて提出とか。面倒くさいことこの上ない。
ため息を吐きながらぐりぐりと紙面に立案を書き込んでいく。
背後からくすくすと笑い声が聞こえて、すっと俺の隣にマグカップが置かれる。
マグカップから離れていく手をたどって行くと、菫色の髪が視界に映る。
「ご苦労様です」
「どーもありがとーございますー」
そして衛生兵長は俺の向かいの席に腰掛けた。
俺はペンを止めないまま「なんか用」と尋ねる。
彼女は数秒の思案の後、佇まいを直して真正面から俺に問いかける。
ちらりと顔を上げると、真っ直ぐな視線が俺を射抜いた。
「剣に人格を投射するって……本当にそんなことが可能なの?」
「まあ、理論的には」
俺は視線を再び紙面上に戻すと、ぐりぐりと書類を書き始めた。
2人を残して誰もいなくなった会議室で、彼女が淹れてくれた珈琲を口に含む。
淹れたばかりの珈琲はとてもよい香りがして、薄味で美味しくは無かったが口直しにはちょうどよかった。
「理論的には?」
「そ、理論的には。現実問題、それに耐えられるだけのベースがないんだよね」
そう。
可能なのはあくまで理論上だ。
地上軍には物資がない。人も時間も、全てが足りない。
「人格は投射できても投射させる器がないんだ。これじゃどうしようもない」
試さなくたって、結果は分かっている。
通常のレンズじゃ、まったくエネルギーが足りない。
人格を受け止めるだけのベースが作れない。
エネルギーを無尽蔵に放出できるレンズがあれば。
人格投射に耐えられる強度をもつレンズを作ることができたら。
しかし現在の地上軍のレンズ加工技術程度では到底無理な話。
だからこれは、そんな夢のようなレンズが存在していたら実現する理論。
(いっそのこと、神の眼でも作ってやろうか)
ため息とともに書き終えた書類を揃える。
そして残った珈琲を一気に胃袋へ流し込んだ。
「ごちそーさま」
「いいえ、お粗末さまです」
にこりと微笑んで、彼女はマグカップを持ち上げると、カチャカチャと手際よく片付けていく。
動作にあわせて揺れる長い菫色を眼で追いかける。が、暇つぶしにもならなかった。
興味の対象が無いつまらない空間から退散しようと腰を上げた時。
「あなたはこの戦争が終わった時、なにかしたい事がある?」
彼女はふと思いついたようで、片手間に俺に問いかけた。
俺は再び椅子に腰掛けて彼女の背中を見やる。
相変わらず菫色は揺れていた。
「やりたい事ぉ?」
「そう、やりたい事。欲しいものでもいいわよ?」
急に言われて思いつくほど欲しいものは、無い。
ぼんやりと部屋を眺めながら答えを探す。
トレイの上に陳列させられたカップが目に入った。
「何でそんなこと聞くの」
「あら、聞いちゃいけない?」
含みを持った声が聞こえる。
そーだなあ、と前置きを呟いて。
「珈琲が飲みたい。それも、すっごい濃いやつ」